あ。俺、重症だ。
「斗真が冷たいよー。」
日向がそう言ったのと同時にドアが開かれた。
今から俺は名探偵シャーロック・ホームズ。
日向の視線は無視して役になりきった。
―――
「ホームズさーん。あたしトリックも犯人もわかっちゃったんですけどー。」
推理が始まって数分後。
なんとも笑顔が輝いている執事日向が俺の後ろからそう言った。
参加者の中で今まで誰もたどり着けなかったトリックまでもわかったと言う。
そう、よく観察して推理すればこの事件は序盤の今の時点でトリックも犯人もわかってしまうのだ。
このあとカモフラージュというか、客を混乱させるためのそれっぽい場面をいくつか用意している。
…どうしよう。
今全てを暴露されたら、俺の見せ場全部盗られる。
「ほ、ほぉ~…それは興味深い。君の推理を聞きたいところだが、今はまだその時ではないのでね。その推理は心の中にしまっといてくれ。」
「嫌です」
しれっと「嫌です」じゃねーよ!
「まずー、犯人…」
「ちょ、ちょっと待った!そこの執事さんは随分と聡明な頭脳の持ち主のようだ。ぜひ私の助手を務めて頂きたく思う。どうかな?」
どうだアドリブにしちゃあ上出来だろ!
「嫌です」
だーかーらー…
「嫌です」じゃねーって!!