あ。俺、重症だ。
涙を拭いて振り向けば、そこには息を切らした彼。
ごめんなさいと謝る姿は、イケメンなのに情けない顔。
「また追いかけられた?」
こいつは校内で有名人だ。
モテるモテる。
何人に告られたか数知れず。
「…日向先輩、……好きなんです。俺と、付き合ってください。」
そんなモテ男がこんなこと言っちゃうから、バカにされてんのかと思った。
なのに、
「違います。マジです。俺、日向先輩が好きなんです…。」
そんな切ない顔で、そんなこと言わないで。
パニックになっちゃうじゃんか。
翔は卑怯だ。
いつもはニコニコして人懐こい笑顔で近付いてくるのに、こう言うときばっかり男の子の顔になりやがる。
あたしがこんな状況に慣れていないのを知ってか知らずか、モテ男は恥ずかしい台詞をサラリと言ってのけた。
「…キスしていいですか?」
ダメじゃぼけー!
と戦っていると、騒音と共に現れた3馬鹿。
正直助かったけど、見られたくなかったのも事実。
そしていつものように馬鹿騒ぎして、あたし達の卒業式は幕を閉じた。
「日向、翔にいじめられたら、オレんとこ来いよ。」
「うん。わかった。」
「そこ即答ってひどくないですか?」
END.