成人しちゃっていいんですか
「………なんだか言いたそうだね」

(ずるい)

(なんでよ)

(また…)




「ほらっキスしてやるから来い!」




 パシャ



「…嘘だ……!」

「………はぁ…」



「行けよ…」



彼はあたしからのキスを受け入れて、背中を押して車に乗り込んだ。

「…い」



眩しいライトを照らしながら彼は知らない色の車で雨の音を残し消えた。



「ずるいよっ!! こんっこんなことされたら…」

(言えないよっばか!)



あたしは俯いて、雨に濡れるのも構わずにただ立ち止まっていた。
眠ることなんてしなければ帰らずに済んだかもしれない。

そう思うのに。

「くっ…」



『マヤ!!』



「フッ…」


「…どこに行ってたんだ」


ふわりと香るパパの香り、に包まれた。


心配する両親の声があたしを包んで、あたしは嫌いになってしまった両親の前で泣き崩れた。

「ただいま」と呟き泣いて、何処かで安心してしまう。




あれほど帰りたくなかったのに帰って来てよかった…
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