成人しちゃっていいんですか
キ-ンコ-ン…カ-ン……コ-ン…



「ドジッ」



ぐさっと彼氏の言葉が胸に突き刺さる。
陸さんは今日もとってもいい声で。

あたしはもうすでに泣きそうになってた。



「くっ」
「“くっ”じゃない。立て。いいから5秒数える内に立て」
「わっわかりまし…」

頭を押さえつけられ。

あたしは彼に触れた。



ずるい。



「…時間は過ぎた」
「……っ でも!」

「おわりだ」

そんな!!

そんなのってずるい。

あたしが好きになっちゃったこと知ってるくせに。

あたしはもう最後の恋だって決めてるのに。


「まっ‥!!!」



置いてかないで。──の言葉も聞いてくれないで。
彼氏の筈の彼は一人。
屋上の扉から下へと階段を降りて行ってしまった。

こうなるとあたしは一人で家に帰るしかなくなるのだ。

暗い階段に薄暗い廊下を渡って。



「何時だと思ってるのっ!」



お母さんにそう叱られて家に夕飯に辿り着く。
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