成人しちゃっていいんですか
[夏海]

小声で話し掛けると夏海は聞こえているのに関わらず。

無視した。

[夏海っ]

少し、声のボリュ-ムを上げれば周囲がこっちを向いた。

「………」

教科書を無言で読む振りをして気配が消えるとまた、夏海を呼ぼうと口を“な”の形に変えた。

───なに授業嫌か。


えっ。
警戒心を溶く瞬間。

オレは痛さに頭を抑えた。



「別に留年したいなら構わないが」

「先生~」

涙ぐむほどじゃないが、眠かったせいもあって。

実際集中して授業を受ける気持ちなんて、欠片もなくて。


そんなのが重なって先生が横隣りに並んだことも。



わからなかった訳で。


「放課後教室に残れよ」
< 163 / 213 >

この作品をシェア

pagetop