成人しちゃっていいんですか
「先輩」

「………」

「………………」

「なに?」

「……ッ あの肉追加します?」
焼肉を食べる手は止まらずに。それでも焼肉がこんなに美味しいけど、美味しくないなんて変な話で。

彼女候補の河辺マヤはまだ戻って来なくて。

「おい」
「はい」

「あっつぅう!!」


 ぎゅっ

『……』

「あっ、すみませんあの借ります」
「うん」
「……?……くっ…ゃでも………ッ……」

「??」

先輩、その顔はないんじゃないッスか?

いやだって先輩おしぼり渡すのに手を握らなくたってねえ?

つか笑ってるでしょ。

ほんと酷い人だ。

そして、俺はもっと酷い男だと思う。

だって彼女は最悪なタイミングで戻って来てるのだから。

彼女は俺の飲んでるステンレスのグラスに映っているのだから。俺達はこれだけでもじゅうぶん悪党だと思う。
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