優しい君に
「もちろん、奈月さんとは、暫くして両思いになった。だけど、そっからずっと泥沼状態。」
きっと、どちらも譲らなかった。
お父さんも、太郎さんも。
どちらも、奈月さんの幸せの為に、譲らなかった。
「…それで…?」
黙り込んでしまった大ちゃんに先を促す。
一体どうやって二人はここまで来たの?
「…“今が幸せなの”」
優しいケーキの香りと共に、そっと囁いた。
「私が、パパにそう言ったのよ。」
2つのケーキを私たちのテーブルに置いて、奈月さんが微笑んだ。