優しい君に


大ちゃんは暫く考えこむように瞳を伏せた。



いつも強引でおちゃらけてる大ちゃんは、昔からたまに、こんな表情を見せる。



とても、大人びた表情。



真剣な顔の大ちゃんを見ていると、たまに こっちが本当のような気がする時がある。





だけど─…

私は、この表情が嫌いじゃない。





大ちゃんの長いまつ毛が悩ましげに揺れた。



音もなく目があった。




その茶色に近い瞳は、まっすぐに私を見つめている。




その瞬間、魔法にかかったみたいに体が固まった。





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