優しい君に
「…休み時間、絶対だよ?」
少し小さな声でそう言ったら、大ちゃんは笑って、私の頭を撫でた。
その温もりに、不安な気持ちは引いていった。
「…じゃ、バイバイ。」
「おぅ…バイバ…って、みぃ!?どこ行くんだよ!?」
「私、新入生代表だからスピーチするの。だから打ち合わせ行ってくるね。」
早口でそれだけ言って私は人混みの中に入った。
不意に風が吹いて桜を散らした。
─『桜の花びらを捕まえられたら、幸せになれるんだよ!』
幼い頃、大ちゃんがそう言ったのを思い出して、少し笑う。
そっと空に手を伸ばせば、一枚の花びらが舞い込んだ。
(幸せになれるって、信じてたの。
幼いあの日から、ずっと…)