優しい君に
「ねぇっ!!櫻井美紅ちゃんでしょ!?」
形のいい唇が動くのが間近で見えた。
長いまつ毛がパチパチと忙しく上下する。
確かに、櫻井 美紅は私の名前。
『うん、そうだよ』と言えば、話はすぐに終わるのかもしれない。
「ち………」
クラス中の注目が、私に冷や汗を増加させた。
「……ち………。」
本当に小さな声だけど、静かな教室の中では確かに響いていた。
「ち…違います………っ」
「へ?」
「美紅ちゃん!?」
矢代くんが呆気に取られてる。
前のほうから鈴木さんの声もした。