優しい君に
あれ?私何言ってるんだろ…


私は、櫻井美紅じゃない。


否定するなんて、おかしな話。



案の定、クラス中の人が訝しげに眉を歪めた。



「…あいつ、櫻井美紅じゃなかったっけ?」

「わかんない…“みく”じゃなくて“みゆ”とか?」




クラス中で憶測が飛び交う。



いいえ…
私は櫻井美紅であってます。



ごめんなさい、自分でもよく分からないような嘘です。




「……プッ………」




隣から小さくそんな声がした。



「あははははっ!!!!美紅ちゃんさっすが!!!」




矢代くんが目に涙を浮かべて大笑いしている。



むしろ、泣きたいのは私だ。





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