優しい君に
「そろそろ帰らなきゃね。最終下校時間はとっくに過ぎてるもの。」
先生はそう言って立ち上がった。
私も同じように席を立つ。
「あ…珈琲ご馳走様です。」
「いいえ~お粗末様でした。」
クスクスと笑いながら歩き出した先生の一歩後ろを歩く。
「あの…」
昇降口に近づいてきた時、私は控えめに沈黙を破った。
「え?」
先生は振り向きながら、不思議そうな顔をした。
「あ…いえ…1つ不思議なことがあって…」
モゴモゴと言うと、先生は、何?、と聞き返した。