マイエンジェル†甘い声で囁いて
三国くんが見ているのは私じゃなくて、ピアノの向こう側だった。


…なぁんだ。三国くんに限ってありえないかぁ。あれ?ちょっとガッカリしてる?私。


ホッとしたような残念なような、そんな気持ちを抱えつつ、スカートに視線を落とす。


「今から弾くの、オレの…好きな曲。オマエは知らないかもな」


そう言って、三国くんはポロンと鍵盤を少しならす。


何弾いてくれるんだろ。


「…今は誰もいないから、しっかり聞いてろよ」


誰もいないから…ね。ハイハイ、聞きますよぉ?


「三国くんの生が独占できるなんて幸せ者だねっ、私」


「そーいう顔」


「…え?」


三国くんはふんわり笑うと、私の目をじっと見る。


「そういう表情が見たかった」


「あ…あははっ。そう?やだ~、恥ずかしいっ」


何言っちゃってんだろ。いつも私に対して毒舌なのにぃ。


「オマエの為に、心込めて弾くから。聞いてて」


三国くんはそういうと鍵盤に触れ、静かにメロディを紡ぎ始める。


な…何?


今、何て言った…?




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