あたしの風をあなたに…
芝崎は言葉を続ける
「去年はな…県コンクールで初めて金賞とれたんだ
それだけでもすごいのにさ
アイツら悔し泣きしたんだよ
オレはそんなアイツらを本当に連れて行きたいんだ・・・」
思いあたる言葉は1つしかない
「普門館・・・」
澪が言うと芝崎はうなずいた
全国大会・・・
中学生と高校生ならだれでも憧れるあの黒い床・・・
でもそこで吹くには
何千、何万校の学校よりすばらしい演奏をするしかない

「うちの部長とコータから聞いたんだ
『トランペットがものすごくうまい女の子がいる』ってさ…
その時は澪とは思わなかったがまさかな…」

笑ってた芝崎が急に真剣な顔になった
「オレは本気だ…
頼む力を貸してくれ…」

「先生・・でも…あたしには、もう吹く資格が・・・ないんです・・・」

「資格、か…」
芝崎の言葉にあたしはうなづいた

もうあんな風にはなりたくない…
楽器を吹いても、音楽を聴いても、何にも感情が生まれて来なかった機械みたいな人間に

うつむきながら泣く彼女に芝崎は首を横にふり彼女の肩に手をおいた
「アイツなら…
『そんな資格があるとかないとか・・誰が決めたんだよ?』って言いそうだな」


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