あたしの風をあなたに…
やがて彼女の演奏が終わった
オレは彼女に近づいた
でも途中で立ち止まったんだ

だって・・・・
彼女が泣いていたから
彼女の涙は白い頬を濡らしていた

彼女はこっちに気がつき顔を向けた途端
「「あ゛!」」
二人して見事にハモった

「あんた…さっきぶつかっても謝らなかった失礼男!!」
彼女はオレを指さした
「嫌ぁ〜あれには山よりも高ぁく谷よりも深ぁい理由が…」

オレの言い訳を聞きながら彼女は涙をぬぐい、トランペットのマウスピースをハンカチで吹いて渡した

「ちょっっ!まだ話が…」
「これでおあいこね!!」

彼女は怒りながらまた指をさす
「はっ?」
「さっきあたしを突き飛ばしたの…これでチャラで」
「あ゛ッ!本当にゴメンって」
「あと、このこと…誰にも言わないで…」
彼女が言うと階段をおりて行った
オレはただ立ったまま
彼女の姿がなくなるまでずっ見ていた

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