二片の桜
重い沈黙が続いた。
近藤は、目を瞑り眉間にしわをよせている。
が次の瞬間……
「そのような切羽詰まった顔をするでない。」
笑顔を浮かべて砂柚の頭を撫でていた。
「近藤さんっ!
そんな怪しいと言わんばかりの奴のことを信じんのか!?間者だったらどうする!?」
「トシ。流石に相手は女子だ。もう少し口調を和らげたらどうだ。」
「はぁ?女だろうと俺達の敵なら…ん?…女ぁぁぁあ!?」
勢いよく砂柚の方に首を向け、土方は凝視した。
砂柚が首を縦に振り肯定の意を示すと、視線は暫くの間。砂柚の足に注がれていた。
スカートの丈は膝上と短い。
男だと思っていた。
女があられもない恰好をして京の街を徘徊するなど思ってもいなかったのだ。
「ということでだ、総司。可愛殿を―――そうだな…総司と平助の間の部屋に案内しておあげ。」
「え……、部屋?」
思いもよらぬ言葉に砂柚はキョトンとする。
「そうだ。家が分からないのだろう?
なら、家を見つけるまで此処に泊まるといい。」
それは願ってもみない提案だった。
タイムスリップをした今、砂柚の家はない。こんな寒い中、放っておかれると思っていた。
「いいんですか…?」
「あぁ、遠慮しなくていい。」
「近藤さん!いい加減にっ…、総司!連れて行くこたぁねぇぞ!」
土方には近藤を止めることが出来ず、沖田に期待を託すが見事に裏切られた。
「はい。近藤さん!」
土方は沖田が近藤の言うことをよく聞くのを忘れていた。
残念ながら自分よりも。