二片の桜
砂柚は安心しきっていた。
「えっと……沖田さん?」
「はい。沖田でいいですよ。どうかしました?」
見上げると、見惚れるような笑顔がある。
きっと彼には綺麗という言葉が似合うだろう。
「あのっ、有り難うございました!」
「えっ?」
初対面から刀を突きつけられた相手によく笑えるものだ…。
非難せず、礼を述べる砂柚に沖田は多少たじろいだものの。
「どういたしまして。」
「はいっ、お陰様で…凍死しなくてすみました。」
「いえ、こちらこそ。女子とは知らず刀を向けてしまってすみません。」
満面の笑みで答える。
けれど先刻の瞳は、女でさえも斬るという気迫が伝わってきていた。
思い起こせば砂柚の身体が震えそうになる。
「えっと……ちょっと待って下さい。私、男に見えますか?」
だが聞き捨てならない台詞に顔をしかめた。
沖田は、首を捻り唸る。
「うーん……。」