二片の桜
「ここが貴方の部屋になります。」
襖を開くと中は暗い。
灯籠に火が灯り、部屋は暖かみのある光に照らされた。
「じゃあ、私はもう行きますね。
お休みなさい。」
「……はい!おやすみなさい。」
自然と笑みが浮かぶ。
頭を下ろせば黒いショートの髪も揺れた。
パタリと閉まる襖。
遠ざかる足音に耳を傾けながら砂柚は片割れの柚羅を思い出していた。
顔が引きつり笑えなくなる。
私が柚羅の部屋から居なくなってどうしてるかな?
探してくれてるのかな?
もしかしたら泣いちゃってたりするの?
砂柚は開いた両手をじっと見つめた後、今さらながら寒気を感じ布団に潜り込んだ。
次第に身体が震え出す。
土方や近藤…
そして沖田に殺されるかと思った。
笑顔でごまかしていたが一人になり緊張が解ければ止まらない。
「柚羅…私、どうすればいいの?帰りたい…。」
現代にいる柚羅の元へ帰りたい。
しかし、砂柚はまだ知らない。
まさか……
柚羅も幕末へタイムスリップしていたとは――。
夢にも思っていなかった。