二片の桜
攘夷志士
柚羅は、自分の部屋に居たはずだった。
なのに、何故星が瞬く屋根の下にいるのだろうか。
夜遅いのか人通りはあまりないが、昔の武士のような格好をした男を見て柚羅は隠れるように建物の影に身を潜めていた。
砂柚はどこに行った?
私は、何でこんな所にいるの?
柚羅は思索するのに夢中で気付かないでいると…………
目の前に若い男が立っていた。
「ねぇ、君、そんな所に座り込んで何してるの?」
「それは…………」
チャキ…
と鯉口を切る男。
柚羅は、男が帯刀していた刀に目を向けるが物怖じ気する様子も無く男の顔を見た。
前髪が長く、左目は隠れるように分かれ。
線が細く女と見紛う程、綺麗な顔を飾るのは、やや釣り上った目。
「それは、何?」