二片の桜
「あぁ、これは玩具だよ。買ったの。」
「へぇ〜、玩具何だ?」
声が上がり気味になり、男は口角を上げている。
「……馬鹿にしてるの?」
その様子を不快に思っていると男は、首を横に振った。
「いや、別に。」
しかし、口角は上がったままで。
柚羅は手持ち無沙汰に空を見上げると小さく呟いていた。
「……目、覚めないかな。この夢、やけに寒い。」
「……行く宛が無いなら、“夢”が覚めるまで僕のとこ来る?」
願ってもみない提案だ。夢が覚めるまで、薄暗い場所に一人で居たくない。
暇過ぎてたまらなくなるから。
「いいの?」
「いいよ。ただ、先にその玩具は預かってもいい?」
「うん!」
純粋に男を信じ柚羅が玩具の銃を手渡すと、その軽さに男は目を剥いた。
そして、受け取った銃に対し何を思ったのか否、無意識にやったのかもしれない。
銃口を柚羅の額に向けていた。
カチャ…
発砲音は起きなかった。
「どうしたの?」
何かのごっこなのだろうか。
「これ……、本当に玩具なんだ。」
よく見れば弾を充填するような場所が無い。