二片の桜








「……あ、あの?」


柚羅は、じっと見つめられ気まずくなる。


「稔麿…お前なぁー…。女と遊ぶのは構わねぇけどよ、此処に連れてくんなよ。此処に。」


晋作と呼ばれた男が言うと稔麿は懐に手を入れていた。


「いいじゃん。別に。だって、この子面白いんだもん。こんな物持ってたんだよ?」


黒塗りの玩具の銃が顔を出す。


銃口が己に向けられ晋作は息を呑んだ。



「なっ―――?!」


西洋の銃!?


「ばぁん。」


歌うように言って引き金が引かれる。



「うわぁっっっ―――!」


反射的に晋作は畳に倒れた。



それを柚羅はきょとんとして見ている。

玩具の銃なのに、何で倒れるの?



「晋作はやっぱ……馬鹿だねぇ〜。」



倒れて固まる晋作にちらりと視線を送ると、もう一人の男は険しい顔をしていた。



「稔麿!冗談にも程があるぞ。」


空弾だったのか発砲音がしなかったため、晋作が打たれていないと気付いたようだ。



「桂さんってば、相変わらずお堅いんだから。」


銃口が今度は桂に向けられる。


カチャ…


「つっっっっ!」



引き金が引かれ桂は思わず固まってしまった。



「ただの玩具じゃない。

クスクス…何してるの二人とも。」



悪戯が成功した子供のように笑っていた。




< 24 / 27 >

この作品をシェア

pagetop