二片の桜
「……あ、あの?」
柚羅は、じっと見つめられ気まずくなる。
「稔麿…お前なぁー…。女と遊ぶのは構わねぇけどよ、此処に連れてくんなよ。此処に。」
晋作と呼ばれた男が言うと稔麿は懐に手を入れていた。
「いいじゃん。別に。だって、この子面白いんだもん。こんな物持ってたんだよ?」
黒塗りの玩具の銃が顔を出す。
銃口が己に向けられ晋作は息を呑んだ。
「なっ―――?!」
西洋の銃!?
「ばぁん。」
歌うように言って引き金が引かれる。
「うわぁっっっ―――!」
反射的に晋作は畳に倒れた。
それを柚羅はきょとんとして見ている。
玩具の銃なのに、何で倒れるの?
「晋作はやっぱ……馬鹿だねぇ〜。」
倒れて固まる晋作にちらりと視線を送ると、もう一人の男は険しい顔をしていた。
「稔麿!冗談にも程があるぞ。」
空弾だったのか発砲音がしなかったため、晋作が打たれていないと気付いたようだ。
「桂さんってば、相変わらずお堅いんだから。」
銃口が今度は桂に向けられる。
カチャ…
「つっっっっ!」
引き金が引かれ桂は思わず固まってしまった。
「ただの玩具じゃない。
クスクス…何してるの二人とも。」
悪戯が成功した子供のように笑っていた。