二片の桜
今日は、もう何事も起こらなければいいんですけど…。
不逞浪士に会えば最悪斬らねばならない。
刀を使うのは楽しくて好きだが、相手が弱すぎる。
沖田にとって巡査は退屈以外の何者でもなかった。
どうせ刀を交えるのなら強い人間とがいい。
だが、実際の巡査では沖田の心を弾ませる浪士は現れない。
「甘味…食べたいですねぇ〜…。」
唯一、彼の心を弾ます物と言えばそれくらいだ。
「沖田先生…。緊張感がとけるようなことを仰らないで下さい。」
「あははー、すみません。退屈で。」
呆れたような隊士に苦笑を浮かべる。
沖田は、周りに気を配りつつも再び空を見上げた。
食事。
稽古。
巡査。
変わらない毎日。
だけど、目まぐるしく過ぎていく。
沖田は心の隅で物足りなさを感じていた。
その時…
「ゆ…………ぁ。」
囁くような声がした。
「あれ?誰か何か言いました?」