二片の桜
「えっ………、誰。」
砂柚は目を見開いた。
目の前に立つのは、鮮やかな浅葱色の羽織りを着た若い男。
男の後ろには他にも同じ羽織りを羽織る男が数人いる。
何より砂柚の目を引いたのは彼らが腰に下げた日本刀。
「私は新撰組一番隊組長沖田総司です。」
端正な顔立ちをしているが線が細く女と見間違えそうになる。
「し…新撰組?」
聞き覚えがあった。
「貴方は?どうしてこんな所に?」
あくまで柔らかい笑みを浮かべる沖田。
「わ、私は…可愛砂柚。
どうして、ここにいるかは……分からない。」
柚羅の部屋にいたはずなのに。
始めは時代劇の夢を見ていると思った。
「あー、困りましたねぇ…。」
だが、地面についた指先がかじかんでいる。
刺すような痛みが、
肌を撫でる冷たい風が、
夢ではなく現実だと告げていた。