あしながおにいさん
まさしく僕が美雨が
体感したあの江ノ島の
海風のようだった

その直後
申し訳なさそうに
雫が空から落ちてきた
霧雨に変わり
小さな公園の土を
潤し始める

遊んでいた親子は
いそいそと帰路につき
空を見上げると
風に揺られた
弱々しい微粒子のような雨粒が
僕の顔を湿らした

目を落とすと
消えかかった
命の息吹が
蘇ったように
あの紫陽花に
また雫が
まとわりはじめていた

この紫陽花が
降らせたんだ

まだ枯れ果てたくない
生命力が
そして美雨が
天空から
舞い降りてきたんだ


この紫陽花に姿を変えて・・
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