あしながおにいさん
うだるような
暑さの夏は過ぎ
きんもくせいの
薫り始めるころ

僕と妻の間で
正式に離婚が成立した

雄太は妻が引き取った

妻の家財道具や
雄太の勉強机など
元家族だった
二人の面影を
思い起こすような物は
すべて運び出された

こうやって
独り身になって
見回した我が家に
残った僕の所有物の
少なさにあらためて
驚かされる

バルコニーに出て
秋の夕暮れの
普段とまったく
変わらない風景を眺める

階下では
過ぎゆく週末を
惜しむかのように
小さな子供が
父親とボール遊びを
していた

もう帰ろうという
父親の声かけに
ふくれっ面を
しながらも
一生懸命ボールを
蹴る子供

幼稚園くらいの
男の子だろうか
父親は柔和な表情を
崩さず我慢強く
子供が飽きるのを
待っているようだ

僕と雄太にあんな
親子のふれあいの
思い出の少ないことに
苦笑した
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