あしながおにいさん
会社でも覇気がないと
言われ続け
友人の上田も少しずつだが
僕から疎遠になっていった

何もかもが
あの江ノ島での
出来事を境に灰色に
染まっていった
少しずつだが
黒に近づいている

人との付き合いからは
逃げるように遠ざかり
会社の往復以外は
ほとんど外出もせず
自宅にこもり
いろいろな本を読みまくった

時々部屋の中に
いてさえも
ふわっとした風を
感じることがあった

それは紛れもなく
美雨の仕業だと確信した

こんな僕を
嘲笑しているのか
哀れんでいるのか
それとも・・・

喜怒哀楽の
感情を封印したまま
堕落した生活を
送っていくのが
せいっぱいの僕だった


そして年月が流れ
あの日から二年目の

雨の季節が近づいてきた・・
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