あしながおにいさん
雄太のクラスが終わるのは確か8時。まだ30分ちかくある。

塾の入り口には、ちらほらと迎えの親が集まり始めている。

母親同士はおしゃべりに興じているが、何人かいる父親は、少し放れたところで深刻な顔をしながら携
帯をいじっている。

僕も時間つぶしにと、携帯を開く。

悲しきかな日本人は、人がしていることを確認してから同じことをする癖がある。

なにもやましいことはしていないが、携帯に公共の場で夢中になるなんて、どこか恥ずかしいという気
持ちは常にあるものだ。


上田からもらったURLをクリックしてみた。


自分のプロフィールを入力する画面。


パソコンで通販サイトの登録はしたことがあるので、同じ要領で入力してみた。

趣味・・?自己紹介・・?

そこで、親指が止まった。

趣味なら、昔のことを書けばいいのか。

今はしてなくてもいいのかな。今の趣味は・・、

今の・・。 思い浮かばない。

読書・・だけ?情けない・・。

自己紹介・・。これは今かけるような内容じゃないな。

省略して登録した。


名前は「アキ」にした。
< 11 / 111 >

この作品をシェア

pagetop