あしながおにいさん
翌日、同僚の上田が始業前に、僕のデスクに近づいてくる。

この男は、そのときの心情がもろに表情に表れる、よく言えばものすごく素直な人間だ。

この日の上田は、ほとほと困り果てているという顔をしながら、「やられたよ・・」と、首をうなだれた。

「え?なにがだ」

「ほら、サイト。メアド交換して、話がはずんでな。会う約束したんだ。なんか、あまりにもうまくいきすぎだとは思ったんだがな。相手もソノ気があることばっか言うからさ」


だいたい想像はついた。女に騙されたのか・・?


「昨日駅で待ち合わせて、現れたのが女子高生っぽくてさ、いや、ありゃ女子高生だね。メールではハタチとか言っててさ。やべ〜とか思いながらもそのままラブホ直行したんだ。そしたら・・」


「男が現れて金巻き上げられたとか?」

「いや、そうじゃなくてその女に」

「それって売春だろが」

「ああ、まさしく」

「おいおい、いい年して・・」

「俺はナンパしたいだけで、女にカネ払ってまでしたかね〜さ」

「そういきがってて結局払ったと」

「ああ・・」

「いくら」

「あたし処女なんで、6でって言われた」

「6万?!」

「処女なわけねえのはわかってたんだがな・・」

「あほかお前」

「あほだな」

「近寄るな。病気がうつる」

「うるせえよ。とにかく、お前も俺みたいに騙されねえ程度にしとけよ?もうひっつかまえたか?一人や二人」

そこまでまくしたてて、上田は自分のデスクに戻った。
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