あしながおにいさん
「ごめんなさい、お忙しいのに愚痴っちゃって。もうお昼休み終わりですよね!?」


「いや、まだ大丈夫だよ。それより、咄嗟に思いつく言葉は出てこないけど・・せめてメールのやり取りっていうカタチでもいいからそばにいてあげたい・・」

送ってから後悔した…。こんなフレーズは恋人同士のようじゃないか・・。


勘違いしないでって言われても仕方のないことを書いて送ってしまって後悔した・・。



案の定、レスが遅れている。彼女はこの送信メールをどう受け止めたんだろう。


相手の容姿がわからないがゆえに言葉は重く届いてしまう。きっといやな気分にさせてしまったんだろう・・。




次の美雨からの返信が、僕たちの短いメル友っていう仲に終止符を打つような気がする・・


「 わたしには・・彼しかいませんでした。辛い時も楽しい時も、彼と共有するしかなかったんです。自分を殺して、どんなことがあってもついていくしかないのかなあって・・」


「それだと、いつか壊れてしまうよ?狭い世界で誰とも心から接することもできず埋もれていくなんて・・。美雨さんはまだそんなに若いんだし」


彼女を、僕の人生にオーバーラップしてものを言っていた。



僕みたいに壊れかけた人間になってほしくない・・。


だって、君は・・君を毎日取り囲む花達のように、太陽の下で咲き乱れ、もっともっと輝いていく権利があるんだよ!




「海がめ・・」




僕は、夢遊病者のようにこの短い文を送信した。



「江ノ島の・・?」



美雨はわかってくれた。



「そう、見に行こう。あの海がめを」




しばらくして返信が来た。







「・・はい・・」
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