あしながおにいさん
手を繋ぐ…。その繋ぎ方で今の心情が表れるものなのか…。
掌から美雨の心の内側が読み取れるんじゃないかって思うほど伝わってきた。
「…ゃ、やめてくださぃい…恥ずかしい…」
柔らかく僕の手を突き放す。
「ごめん…、なんか…、急に手を繋ぎたくなって…」
驚くほど素直に言った。そう、さっきのような邪心もない、純粋で小さな欲望。
「…やっぱり彼氏を気にしちゃう…?」
かもめがそばを通り過ぎた。その行方を目で追う美雨。その視線が僕を偶然とらえた。はにかむように下を向く。
もう一度、手を差し延べる。さっきより少し微熱を帯びた掌が、ゆっくりと、スローモーションのようにその指が動き出し、頼りなさ気だけどしっかりと、僕の手を握りしめた。
驚き、羞恥し、迷い、そして少しだけ美雨の心の扉が開き始めた。そんな気がした。
屈託なくいろいろなことを僕に話してくれる心とはまた別の、もうひとつの心の扉が…。
橋を渡りきるまで、僕たちは無言だった。言葉ではなく、お互いの、もうひとつの心の扉をノックしあっているかのように。
降りしきる霧雨の中、僕たちは江の島に足を踏み入れた。
梅雨明け間近の、暖かい風が軽やかに舞う島へ。
掌から美雨の心の内側が読み取れるんじゃないかって思うほど伝わってきた。
「…ゃ、やめてくださぃい…恥ずかしい…」
柔らかく僕の手を突き放す。
「ごめん…、なんか…、急に手を繋ぎたくなって…」
驚くほど素直に言った。そう、さっきのような邪心もない、純粋で小さな欲望。
「…やっぱり彼氏を気にしちゃう…?」
かもめがそばを通り過ぎた。その行方を目で追う美雨。その視線が僕を偶然とらえた。はにかむように下を向く。
もう一度、手を差し延べる。さっきより少し微熱を帯びた掌が、ゆっくりと、スローモーションのようにその指が動き出し、頼りなさ気だけどしっかりと、僕の手を握りしめた。
驚き、羞恥し、迷い、そして少しだけ美雨の心の扉が開き始めた。そんな気がした。
屈託なくいろいろなことを僕に話してくれる心とはまた別の、もうひとつの心の扉が…。
橋を渡りきるまで、僕たちは無言だった。言葉ではなく、お互いの、もうひとつの心の扉をノックしあっているかのように。
降りしきる霧雨の中、僕たちは江の島に足を踏み入れた。
梅雨明け間近の、暖かい風が軽やかに舞う島へ。