あしながおにいさん
「美雨‥?」


「‥ご、ごめんなさいアキさん‥、私‥」


「今、美雨はどの辺を泳いでるかなぁ‥」


「‥え?」


「多くの人が目を向ける沖縄あたりのエメラルドグリーンの海っていうよりは、そうだなぁ、黒潮にもまれながらも、悠々と楽しみながら深いブルーの小笠原の海を泳いでるんだ。イルカ達に囲まれながらね」


最初キョトンとしていた美雨も、元々想像力が豊かなのだろう、その情景を頭に浮かべてるようだ。


その瞳に光りが宿ってきてる‥。


僕と美雨のいるこの場所が、あたり一面に広がるブルーのカーテンに覆われ始めた。


かつて僕がよく「会話」したハコフグが、にこにこしながら僕らの回りに集まってきた。


僕と美雨だけの海が、僕らを優しく包み込む‥。


その世界には、僕らが抱える現実を微塵も感じさせない力強さがあった。
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