あしながおにいさん
僕の揺れる心は、この不思議な雨の降り注ぐ下で、少しずつ少しずつうつむいていた顔を上げ、僕を見つめてくる美雨の視線によって晴れたような気がする。
僕は美雨が好きだ。その気持ちは会ってから急激に右肩上がりになっている。でもあえて、ウミガメを引用して美雨を諭した。
かっこつけて説教じみたことと捉えられたかもしれない。好きだからこそ、俗に言うエンゲージブルーに落ち込む美雨を、元気付けてあげたかった。
婚約者を信じてついていくこと、美雨の揺らぐ気持ちをまっすぐにしてあげること、それが今の美雨には必要なんだ。
相手を想う強い気持ちに、見返りを期待しない、無償の愛情。それこそが、美雨という花を成長させる養分なんだ。
僕たちはそれぞれの思いを胸に、会話はないけれど心と心が融合していくような、そんな気分を味わいながら江ノ島の頂上にある、植物園を目指した。
道すがら、霧雨のシャワーを浴びて気持ちよさそうにしている花たちに、何度となく近づく美雨。ときにはしゃがみこんでじっと花を見つめていた。
「さすがにお花屋さんだね。気になる?」しゃがむ美雨の後ろから、ぼくも覗き込む。
美雨の香りが、鼻孔をくすぐる。
僕は美雨が好きだ。その気持ちは会ってから急激に右肩上がりになっている。でもあえて、ウミガメを引用して美雨を諭した。
かっこつけて説教じみたことと捉えられたかもしれない。好きだからこそ、俗に言うエンゲージブルーに落ち込む美雨を、元気付けてあげたかった。
婚約者を信じてついていくこと、美雨の揺らぐ気持ちをまっすぐにしてあげること、それが今の美雨には必要なんだ。
相手を想う強い気持ちに、見返りを期待しない、無償の愛情。それこそが、美雨という花を成長させる養分なんだ。
僕たちはそれぞれの思いを胸に、会話はないけれど心と心が融合していくような、そんな気分を味わいながら江ノ島の頂上にある、植物園を目指した。
道すがら、霧雨のシャワーを浴びて気持ちよさそうにしている花たちに、何度となく近づく美雨。ときにはしゃがみこんでじっと花を見つめていた。
「さすがにお花屋さんだね。気になる?」しゃがむ美雨の後ろから、ぼくも覗き込む。
美雨の香りが、鼻孔をくすぐる。