あしながおにいさん
「アキさん、ありがとう。アキさんのおかげで私の心の中にある、なんかもやもやしたものが晴れてきてます、少しずつですけど」
美雨は、恥ずかしいのか、後ろを向いたまま花に語りかけるようにつぶやいた。
「なんだか、ずうずうしかったかな。土足で踏み込んじゃったような・・」
「そんな・・、そんなことないですっ!」急に立ち上がり、振り向く美雨に僕はあっけにとられた。
「あ、ごめん」
「今まで、こんなにも私の心を見抜いてはっきりと言葉にしてくれる人はいませんでした。恥ずかしくなるくらい的をついてて・・」
「それは・・」
君が好きだから。気持ちが痛いほどわかるから。
初老の夫婦が花たちを観賞しながら通り過ぎてゆく。しっかりと手を握り合い、楽しそうに、相合傘で。
僕たちを見て、にっこりと微笑む老夫婦。その暖かい光景を見て、さりげなく見詰め合う僕と美雨。手を差し伸べた。桟橋での、あの恥じらいはもうない。
僕の右手に、美雨の左手がゆっくりと絡みついてくる。少しだけ右手を引き、僕と美雨の距離が狭まる。美雨の白い耳たぶの向こう側に、きらきら輝く波間が見えた。
ふと見上げると、太陽が雲の隙間からちらちら顔を出し始めた。前のほうに灯台が見えてくる。ここにたどり着いたということは、あの灯台に背を向けて江ノ島を後にする時間も迫っているということ。
この時間が永遠に続いてくれたら。少年のような無垢な願いを真剣に想うほどに、時がたつことの切なさを感じていた。
‥お互いに。
美雨は、恥ずかしいのか、後ろを向いたまま花に語りかけるようにつぶやいた。
「なんだか、ずうずうしかったかな。土足で踏み込んじゃったような・・」
「そんな・・、そんなことないですっ!」急に立ち上がり、振り向く美雨に僕はあっけにとられた。
「あ、ごめん」
「今まで、こんなにも私の心を見抜いてはっきりと言葉にしてくれる人はいませんでした。恥ずかしくなるくらい的をついてて・・」
「それは・・」
君が好きだから。気持ちが痛いほどわかるから。
初老の夫婦が花たちを観賞しながら通り過ぎてゆく。しっかりと手を握り合い、楽しそうに、相合傘で。
僕たちを見て、にっこりと微笑む老夫婦。その暖かい光景を見て、さりげなく見詰め合う僕と美雨。手を差し伸べた。桟橋での、あの恥じらいはもうない。
僕の右手に、美雨の左手がゆっくりと絡みついてくる。少しだけ右手を引き、僕と美雨の距離が狭まる。美雨の白い耳たぶの向こう側に、きらきら輝く波間が見えた。
ふと見上げると、太陽が雲の隙間からちらちら顔を出し始めた。前のほうに灯台が見えてくる。ここにたどり着いたということは、あの灯台に背を向けて江ノ島を後にする時間も迫っているということ。
この時間が永遠に続いてくれたら。少年のような無垢な願いを真剣に想うほどに、時がたつことの切なさを感じていた。
‥お互いに。