あしながおにいさん
「わたしは・・昔から人見知りが激しくて。自分の殻に閉じこもっちゃうタイプで。すごく暗い女の子でした。恋することさえも・・」言葉を区切り、うつむいてしまう美雨。


「・・高校出てすぐ今のお花屋さんでアルバイト始めたんです。お花に囲まれていれば、ただそれだけで十分で。フラワーアレンジが大好きで、お得意様になってくれたお客さんに褒められたんです。もうわたしは幸せで。じきにちゃんと正社員として働き始めたんですけど、ちょうど母の日前の忙しいころ、彼が現れて・・」



そうだった。僕は、美雨と彼の出会いのことは聞いてなかった。


「お客さんとして?」


「はい。ぶっきらぼうだったけど、彼のお母様に贈る花束をアレンジしたいって。偶然わたしが受け持つことになったんです」



母の日・・。



そういえば田舎の母に、ここ最近連絡もしていない自分に気づく。
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