あしながおにいさん
美雨の言う男性は、婚約者である彼ではないことは、言わずとも僕の心に伝わった。
美雨らしい、恥じらいながら質素に生き抜く、道に咲く花の主張のような『告白』…。
階段が続く坂道の両脇に、午前中に降り注いだ雨粒で着飾った紫陽花が、先を歩く美雨を包み込む…。まるで通り過ぎる美雨の姿を追うように、一斉に紫陽花達が動き出す。
この島にあるすべての自然は、美雨の味方なんだな…。道に咲く花、太陽、雨粒、そして柔らかな海風…。
ほっておくとこのままここの自然に同化して消え入りそうな。僕の少し先で美雨が立ち止まってゆっくりと振り向く。今まで見せたことのないような、優しい笑顔が眩しい。
「アキさん!お店たくさん見えてきましたぁ!」美雨の後ろに広がる、戻りたくない現実の世界が、僕達を待ち受ける。
二人の過ごしてきた時間がそろそろ終わりを告げる。美雨は、その寂しさや悲しさを断ち切ろうと努めて明るく振る舞っている…と感じるのは、僕こそが淋しがってるから。
弱い人間は僕なのかもしれない…。
美雨らしい、恥じらいながら質素に生き抜く、道に咲く花の主張のような『告白』…。
階段が続く坂道の両脇に、午前中に降り注いだ雨粒で着飾った紫陽花が、先を歩く美雨を包み込む…。まるで通り過ぎる美雨の姿を追うように、一斉に紫陽花達が動き出す。
この島にあるすべての自然は、美雨の味方なんだな…。道に咲く花、太陽、雨粒、そして柔らかな海風…。
ほっておくとこのままここの自然に同化して消え入りそうな。僕の少し先で美雨が立ち止まってゆっくりと振り向く。今まで見せたことのないような、優しい笑顔が眩しい。
「アキさん!お店たくさん見えてきましたぁ!」美雨の後ろに広がる、戻りたくない現実の世界が、僕達を待ち受ける。
二人の過ごしてきた時間がそろそろ終わりを告げる。美雨は、その寂しさや悲しさを断ち切ろうと努めて明るく振る舞っている…と感じるのは、僕こそが淋しがってるから。
弱い人間は僕なのかもしれない…。