あしながおにいさん
思えば僕と美雨を引き合わせたのは、やはり携帯電話。時代を物語る、新しいけど歪んだ男女の出会い・・。友人をさげすむ資格なんてないのもわかってる。


なら、その携帯電話の中に思い出を残したい。


「え・・、あの〜・・」


「なに・・?」


「こんなぶさいくな顔でよければ・・」思わず吹き出しそうになった。


「ありがとう!じゃあ、あ、ほら、そこにすっごく元気な紫陽花あるよね?それを背景にしたいから前に立って」



僕は、美雨がいろいろな花を見かけるたびにその花言葉を脳裏に浮かべる癖を、まだ把握しきれていなかった。


紫陽花をひとしきり見つめ、もう、いいかなと声をかけなければ、いつまでも振り向いてくれない美雨の、落ち着かない様子にさえ気づいてやれなかった。
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