あしながおにいさん
「そういえば、お母さんガメは産卵の時涙流しますよね、テレビでしか見たことないんですけど…」


美雨の真剣な眼差しに、いやあれは涙じゃなくてね、なんてとても言えなかった。


たぶん美雨は、そう信じてるに違いないから。


「お父さんガメはどこかに行っちゃうし、生まれてくる子ガメもほとんど食べられちゃうし…、結局お母さんガメはひとりぼっちになっちゃう」


水槽のウミガメを見つめる美雨の瞳から、一筋の涙が零れてる。


いつもこのウミガメを眺めに来ると言ってた美雨は、こうして悲しみにくれてたんだろうか…。
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