あしながおにいさん
僕は、みだしなみを調え美雨の元へ向かった。土曜日だけに、多くの親子が歓声をあげながら魚たちに見入っている。



美雨は、ウミガメの水槽の前に所在なげに座っている。


あんなに美雨を虜にさせたウミガメの存在なんか忘れてるように。


そわそわして不安げだ。迷い子のように大きな瞳をくるくる回してる。



またあの感情が沸き上がってきた。


抱きしめてあげたい。人目も気にせず、強く抱きしめてあげたい…。さっき僕が美雨を置き去りにした時と同じ感情。



美雨、君は、あまりにも愛らしい…。


回りの喧騒が消える。聞こえるはずもない美雨の鼓動だけが、僕を引き寄せる。



美雨、すぐ行くよ、君の元へ。



そして、もう君から逃げ出すような卑怯なことはしないよ。





真っすぐに、君を見つめるよ…。
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