あしながおにいさん
水族館を出た僕たちは、砂浜に四つの足跡を残しながらしばらく歩いた。


僕を戒めたあの太陽も、一日の疲れを鎮めるように朱に色づき始めた。昼間の土砂降りも重なって、砂浜に人はまばらだ。


あと一週間後の海の日あたりから夏休みが始まり、この砂浜は人で埋めつくされる。


夏休み…か。雄太は、夏季講習に追われて出かけるどころじゃないのかな…。


自然はいつでもどんな人間も分け隔てることなく迎え入れてくれる。大事な成長期の子供が海や山で学ぶことのほうが将来に役立つと思うんだけどな…。


「アキさーん!」


いつの間にか美雨が波間に素足を浸していた…。裾が濡れるのも気にせず。



「こっちに来ませんかー?」

海風になびく美雨の髪の毛が、ゆらゆら揺れた。
< 77 / 111 >

この作品をシェア

pagetop