あしながおにいさん

何故だろう…、美雨の姿におぼろげに重なって見える一人の女性がいた。


薫は今、何してるかな。


この世に二人しかいない、僕の家族…。


美雨に近づきながら、無邪気な少女のように寄せる波と戯れる美雨を見る。


この不思議な感覚はなんだろう。初対面の男と丸一日一緒にいても、臆することなく素直に振る舞う美雨。

愛する婚約者との新しい門出の不安を、すべて包み隠さず話す美雨。


その純真さが、僕にのりうつったかのように美雨の幸せを、ただただ願う。

優しい気持ちになれる。


恋をしているからお互いを思いやれる…?美雨からの、何か見返りのようなものを期待してる?


違う。そんな単純なものじゃない。きっと僕たちは、人間にとってもっとも大切なことを今まさに学んでいるんだと思う。


1番近くにいる人を愛することの大切さ…を。
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