あしながおにいさん
まだ波遊びが物足りなそうな美雨をうながし、浜辺に二人並んで座った。


すぐそばで、小さな女の子が大泣きしている。

いやだー!まだ帰りたくないー!優しく微笑む母親が、じゃあ、あと少しだけね、と言いながら見守っている。


それをにこやかに見ていた美雨に話しかけた。


「美雨、まだ時間は大丈夫?」

もちろん肯定してほしくて。

「はい、ここでしばらく海を眺めていたいです」よかった!


「そうだね、そうしよう」


僕たちの夢のような一日の終わりは、いろんな意味で二人にかかわった海や、目の前に浮かぶ江の島を眺めるのがいいなと思った。


僕のすぐ隣で清々しい顔で海を眺める美雨。思い詰めるように一点を見るんじゃなく、なだらかな曲線を描く湘南の海岸線を、名残惜しむように見渡している。
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