彼とあたし-もう1人の彼-
「暑いね~とか声掛けな?」




季節は夏に入りかけていた。
涼しかった春は
もう遠い過去へ消えた。




「倖ありがと…でもいいの」
「は?」
「幸せは絶望だったから」
「…唯伊は十分なわけ?」
「うん…見てるだけでいいの」





そうだよ、倖。
あたしはまさの背中が見れるだけで十分なの。



なにをしてても…
今はまさの背中だけが浮かぶ。




笑顔は…もう浮かばない。





「唯伊」
「なに?」
「今日失恋パーティーしよ!?」
「…そうだね!」




失恋パーティーか。
気晴らしにいいかもね。




これも倖の優しさだと知っていたから。





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