戦慄の魔説
「そう…あなたが呼んでくれてた人ね?ありがとう。お見舞いに来てくれたの?」


「あの…いや見舞いというか何というか…」
起きて話してみるとふんわりとした雰囲気なのに女の人らしい感じがして挙動不審になってしまった


(おい、惚れるなよ)

「惚れないですよ!!」

「え?」


いきなり龍也さんが現れたから思わず声に出してしまった
もちろん龍也さんの声はなおさんには聞こえないから意味がわかるはずがない

「ごめんなさい!!………今からちゃんと説明します」

それから事故に居合わせた時からの話をした


「そうなの、驚いたけど嘘を言ってるようには見えないし……このへんかしら?龍也…年下の子をからかうのはやめなさい」

信じてくれたのか俺の隣にいるであろう龍也さんを叱った


それからしばらく話をした
龍也さんのことやなおさんのこと
そんな話を聞いていると
なおさんと龍也さんは同時に
「(最後があんな別れなんて…せめてちゃんと別れをいいたかった)」
といった
聞いててびっくりした
一字一句違わすにハモったからだ

二人はちゃんとわかっているみたいだ
ちゃんとその現実に立ち向かおうとしている
ただ最後の言葉も言えないのはつらい


「なおさん…龍也さんの形見みたいなのはありますか?」

「こんなのならあるけど?」


それはペアリングだった
少し前雑誌に形見みたいなのには魂が宿る、想いがやどる、って書いてあった気がした…それを形にすることができれば別れの言葉くらいはお互い言えるはずだ
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