この出会いが奇跡なら-上-
見たくない光景-Kouki-
ふと目をやると、桜と山下の姿。
結構近くて会話も集中して聞けば、ちゃんと聞こえた。
何故か見たくないって、単純にそう思ってしまった。
―――何かムカつく。
そんな感情がくつくつと込み上げてきて、気付いた頃には体が勝手に動いてた。
『俺と一緒に回ってくれない?』って言う、その山下の言葉に。
『こいつとまわんの俺だから』って、そんな俺らしくないこと言って。
――何で、こんな必死になってんだよ。
鈍すぎる桜に、「はあ」と溜め息を吐きたくなる。
『山下君はいい人だもん』
その言葉がやけに、俺の中で執着した。ムカついた。
信じるな、そんな奴。
心がそう叫んだ。
これが何なのか。
何でこんなにムカつくのか。
この時の俺はまだ、その感情が何なのか、全く気が付けていなかった。