この出会いが奇跡なら-上-
「…せ、瀬川さん!さっき笑った!よね?」
「…笑ってない」
「えー、絶対笑ったよー」
あたしがそう言うと、ギロリと凄い目付きで睨まれた。
成斗より怖い目つきかも。
それでもあたしはめげない。瀬川さんと仲良くなりたいから。
「ねえ、瀬川さんって下の名前なんて言うの?」
「………。……真衣」
「真衣!?可愛い名前だね。えっとあたしは」
「…成宮桜さんでしょ」
言おうとした瞬間、瀬川さんにその先を言われてしまい、あたしの言葉がピタリとストップしてしまった。
「え、う、うん…!そうだよ?じゃあこの子の名前知ってる?」
そう言って、愛子をずいっと瀬川さんの前へ出す。
「…うん。山川愛子さん」
「私の名前まで知っててくれたんだ。ありがとう」
愛子は相変わらず、平常心で瀬川さんとも接する。
「…あたしも知っててくれて、ありがとう」
名前を知っていてくれたことが、すごくうれしかった。
瀬川さんは、周りの友達以外関わらないって感じがしてたから。
「…………」
ホントに仲良くなれるかもしれない。
一瞬、心のなかでそう思った。