この出会いが奇跡なら-上-
「ねえ、もしよかったら瀬川さんの事、真衣って呼んでもいいかな」
そう言うと部屋一緒に組もうと言った時みたいに、驚いた顔をして、瀬川さんがこっちを見る。
あ、ちょっと先走り過ぎちゃったかも。
その後、また少し間があいて、
「…別に、いいけど」
そんな素っ気ない返事が、瀬川さんの口からそっと返ってきた。
「本当!?ありがとう。あたしも桜でいいからね?」
「あ、私は愛子って呼んで」
「…分かった」
「いいよ」と返してくれた事実に、あたしは喜びを隠せなかった。
普通に接すれば、誰とでもうまくいく。
きっと真衣は、成斗達と同じ。
悪ぶってるだけで、中身は誰よりも優しい。
そうとしか、思えなかった。