この出会いが奇跡なら-上-
一目惚れって、本当にあるんだなって、初めて思ったあの時。
漫画やドラマの架空の中でしか存在しないモノだと、そう思ってた自分がまさかの一目惚れだなんて。
「…まあ、気になってる人はいるんだけどね」
いきなりそう言ってきた愛子の言葉に、あたしは一瞬にして驚いた。
「ええ!?いるの?好きな人!」
「教えない、これ言ったら桜に怒られるし」
……あたしに、怒られる…?
何で、あたしが愛子に怒るの?
「まあ一生教えることはないと思うから気にしないで」
そう思っていると、愛子が「ははは」と笑いながらそう言った。
…んー、よく分からないな。
それから時間が経ち、空も茜色に染まってくる。
「そろそろ帰ろっか」
「うん、そうだね」
帰ろうとした、ちょうどその時、愛子の携帯が、ピリリ…と鳴った。
「…あ、母さんからだ」
パカッと携帯を開くなり、愛子の顔が不意に不機嫌一色に変わる。
「…はあ、桜ごめん。先帰ってて。用事出来たわ」
「うん、謝らないで。じゃあ、入学式でね」
「ああ、そっか。宿題終わらしときなよ、じゃあね」
宿題終わってないことも、すぐ愛子にはお見通し。
さすがにやらないとやばいな…なんて思いつつ、反対方向へと歩いて行く愛子に手を振って、あたしは一人駅へと向かった。