この出会いが奇跡なら-上-
「いいよ、これくらい…弁償してくれなくて」
「いえ、前見ずに歩いてたあたしが悪いんで…」
「本当に大丈夫だよ、この服お気に入りでもないし」
目の前のその人はそう言って、またにっこりと笑ってあたしに優しくそう言ってくれた。
「いや、どうにかさせて下さい」
「んー…じゃあ何かお返ししてもらおうかな」
その時、そう言った彼の口元が、ニヤりと緩んだ様に見えたのは、あたしの勘違いだったのかもしれない。
そんなことはあえて気にせず、ただアイスがついてしまった真白い服に、…あぁぁ…何て事しちゃったんだ…と自分をひたすら責めた。
「ちょっと、俺について来てもらっても良いかな」
「えっと…はい」
言われるがままに、その人の後ろを付いて行く。
そのままその人を後ろを付いて行き、連れて来られたのは、何故か人が全くいない商店街だった。
商店街のくせに、誰ひとりとしていない…
変なの……。
そう思っていると、いきなり目の前の人が、ははは!と大きな声で笑い出した。