この出会いが奇跡なら-上-
早く名前を教えてくれ。
…ああ。もういいや。
そう思って、また恐る恐る彼に問いかける。
「……春、成斗…だよね?」
その時、いきなりフルネームで、しかも呼び捨てで呼ばれたことが気に入らなかったのか、ピクリとまた眉を動かした彼の口がそっと開いた。
「…何で俺の事知ってんの」
…………そりゃ、知ってるよ。
「…あの、2年前の事、覚えてない?あたし、あなたに助けてもらった事あるんだけど」
…やばい、やばいよ!あたし。
これじゃ、平常心でいられないよ。
あたしの心臓は、どくんどくんと脈立つばかり。
「は?…2年前?知らねえな。お前みたいな奴、助けようとも思わねえよ」
「…………!?」
…な、何?!
お前みたいな奴、助けようとも思わない…だってっ?
じゃあさっき「どけ」って言ったのは何?
あれは本当に通行の邪魔だっただけ?
いや、そんなはずはない。
だってあれ、絶対通行の邪魔になってなかった!