この出会いが奇跡なら-上-
「………」
……ああ。
あたしは今まで、こいつを一生懸命探してたって言うの…?
何か、何か…何か……
………違う。
あたしが思ってた彼と、大分違う様な感じがするんですけど。
「…お前、何か気に入った。名前は?」
「…え!?な、名前…?」
「ああ、そうだよ。お前だけが俺の名前知ってるなんて気持ち悪いだろ」
……ホントに忘れてるんだ。
「……な、成宮 桜」
「ふーん、どこにでもいそうな名前してんな」
「………は!?」
どこにでもいそうな名前してませんけど!?
「それじゃあ、またな、桜」
不意に彼はそう言って、ひと気の少ない商店街を通りすぎて行ってしまった。
「…………」
待って。
ちょっと待って。
今、あたしの事…何て言った?
もしかして呼び捨てで、“桜”って、そう呼んでくれた?
嘘、嘘でしょ。
それに“またな”って。
その彼の言葉が魔法の言葉のように聞こえて、今度また会えるんじゃないかって、そう思ってしまった。
「あ!あたし…何で連絡先とか聞かないの!」
あああ……馬鹿だ、あたし。
何でそんな重要な事聞かないんだ。
せっかく、会えたのに……―――